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『喋れども喋れども〜シェイクスピアのことばの海へ〜』

義庵公演『リチャード三世』を振り返ろうと思います。

書いたのはご存知「シェイクスピア」です。
もう500年以上前の方です。
でも彼の書いた作品は上演され続けています。
その中でも『リチャード三世』は上演回数の多い作品だそうです。

簡単にいうと、リチャードという男が血生臭い悪行を重ね、これ(玉座)を手に入れた末に果てる話です⬇️

今回は『ケイン&アベル』の翻訳も担当された小田島創志さんの新翻訳です。
原作は恐ろしく長いです!
届いた台本は「少し厚め」くらいの印象でしたのでカットされているものだとばかり思っていました。
ところが開いてみてびっくり😳
僕が手にした台本の中でダントツ一番の小さい文字でした⬇️

ちなみに一緒に写しているのは、「近代能楽集」朗読公演の台本と昔の油紙がついている岩波文庫です。
ご覧の通り、昔の岩波文庫と同じ大きさ・・・いや小ささだったのです。

その小さい文字の言葉の海が、少し厚めの台本にびっしり印刷されてました。
そのまま上演したら、恐らく3時間半〜4時間はかかると思われます。

そして稽古は「テキレジ」と呼ばれる台本の見直しに多くの時間を使いました。

シェイクスピアの時代は、いまより遥かにゆったり時が流れていたと思われます。
往時のイギリスでも恐らく食事などしながら一日かけて楽しむ娯楽だったのでしょう。
なので修辞や言葉遊びが多いし、政治的な宣伝布教も兼ねていたと思われるので、自ずと表現が間接的になったりする。
それで長くなっちゃうんです。

でもね、紐解いていくと、「人間関係」と「人」というものと、その「生き様」が面白いのです。
なので、今回目指したのは「分かりやすいシェークスピア」

『リチャード三世』は薔薇戦争の終焉の作品なので人間関係がややこしいのです。
それに加えて、先祖の名を継ぐものだから似た名前が(しかもカタカナの)が多すぎる。
更に爵位や官位などが加わるのが・・・
リチャードも正式名称は「グロスター公リチャード」=グロスターを支配する侯爵であるリチャードってこと。
日本に置き換えると「三河守家康」みたいな感じ!
ちなみに、王位についてからは「リチャード三世」
分かりにくいでしょ!

そこで、名前をなるべく統一し、登場人物も整理していき、重複している表現もバッサリと。
恐らく台本の半分くらいの台詞に墨が塗られたと思います。

そして登場人物がそれなりにいるのですが、今回のキャストは11人のみ。
リチャードのみが通しの役で、他のキャストはみんな複数役を担当しました。
ちなみに僕は5役(後程、写真で解説を!)

そうして、1幕・1時間15分、2幕・1時間5分というところに辿り着きました。

ところが苦難の道はまだまだありました。

今回の劇場は「シアタートップス」
色んな作品を客席で楽しんできました。
ただ出演は初めてです。
裏動線の環境がかなり悪く、かつ複雑とは噂に聞いてました。

少しご紹介しましょう⬇️

この2枚、いわゆる奈落の写真です。

天井高、140センチメートル。
上下の通路も兼ねてます。
で、天井は舞台床です!

中央のハシゴのような階段を降りると女性楽屋があります。(男性楽屋は女性楽屋経由で外階段に出て2階上)

そして今回は客席通路も登退場にも多用しましたが、
ここへのアクセスが・・・

男性楽屋は外階段で2階上へ、先述しましたが、
客席通路奥へはその男性がくやから内階段をへて一階下
ロビーは2階下、となる訳です。

恐らく伝わらないと思いますが(僕だって説明されても劇場入りするまで全くわからなかったから😅)
とにかく階段や梯子を昇ったり降りらりしてグルグル回り巡ってたのです。
トップスの客席通路を使う公演がほぼない訳が身に沁みて分かりました。

ちなみに、これは男性楽屋の扉を開けたところ⬇️

一応室内なのに室外機があるのです。
写真右手が非常階段(外階段)
連日の猛暑の中、扉一枚で室外機の排気と外気が待ち受けているのが男性楽屋・・・
あとはご想像にお任せします。

でもね、人間って(僕だけかもしれないけど)すぐ慣れるんですよね!
ハードな裏動線にも暑さにも「こんなもの」と意外と適応出来ちゃうもので楽しく過ごしました!!

そして、公演の合間に癒しを求めて通ったのがココ⬇️

 

まさに隠れた都会のオアシス、伊勢丹の屋上ガーデン🌳
緑に囲まれて風に吹かれると、心地いいし癒されるし元気になれました!

さて、ここから少し役のご紹介
まずは本役とも言えるヘイスティングズ⬇️

侍従長で王の一番身近仕えるヘイスティングズ。
1幕は通し役で!(1幕最後に処刑台に送られるのでいなくなります)
原作にある色事にだらしない一面は今回ほぼカットされてます。
周りの人からは見え見えだけど、自らの状況が見えてないある意味滑稽で哀れな人物。

2幕のスタートは暗殺者のジェームズ・ティレル⬇️

迷彩のニット帽にドロップのサングラスというベタな衣裳。
衣裳合わせでは「戦場のタモさん」と!

そして聖職者・クリストファー⬇️

ダービーハットと十字架がポイントです。

他に、「使者1」と「オクスフォード」という役もやりましたが、
衣裳的にいうとクリストファーからダービーハットと十字架を取り外せば出来上がり!(写真がないので)
ちなみにオクスフォードはリチャード三世の頭部に鈍器でトドメをさすリッチモンドの右腕でした。

最後に1幕最後に登場するヘイスティングズの「生首」を!⬇️

当初は節目がちの仕上がりだったのですが、
やっぱりヘイスティングズの怨念を加えたいとリクエストして作り直して貰いました。

今回のリチャード役、義庵の主催でもある加藤義宗くん。
とにかく演劇体力のある方。(父親譲りの遺伝子か!)
今回も喋り倒してますが、本人曰く「結構休みの多い役」
そりゃ『審判』では2時間半一人でしゃべってたんだからなぁ・・・

色々な畑育ちのキャストは皆さん魅力的で達者でした。
血生臭い物語なのに、みんな明るく笑顔。
そうそう、今回は公演中に客席から笑いが聞こえてた。
人間の姿って滑稽に見えるし、悲劇と喜劇は背中合わせなんだなぁとも改めて。
そして、客席に起こった笑いに翻訳の創志さんがニヤリと満足気でした。
きっと原作に書かれている人間ドラマを、人の面白さを新翻訳で描きたかったんだろうなぁ〜

またシェイクスピアの言葉の海をもがきつつ渡りたいなぁ!
感謝を込めて〜〜〜

『三島の世界は美しかった〜昭和百年・三島も百歳〜』

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